ケガの応急処置(RICE)

応急処置の基本、RICE(ライス)の法則を知っていますか?

・Rest(レスト)=安静→ケガをした部位を動かさないこと
・Icing(アイシング)=冷却 →氷などで冷やすこと
・Compression(コンプレッション)=圧迫 →包帯などで患部を圧迫すること
・Elevation(エレベーション)=拳上 →患部を心臓より高い位置に保つこと

当院のYoutubeチャンネルでも、ご紹介しております!
https://youtu.be/4HOKR83oMXo

RICEとは上記の4つの頭文字をとったもの。応急処置を適切に行うことでケガからの早期回復を期待できるのです。スポーツ現場だけでなく日常生活でも活用できるものです。ぜひ知って頂き自分や家族、周囲の方のケガの際に思い出せるようにして下さい。※もちろんどれも大切なことですが、ケガの際はRICEの法則を念頭に適切な医療機関を早期に受診して下さいね。
4つの項目を以下に説明します。

「Rest:安静」について
患部を安静に保つこと。単に「動かさない」ということもそうですし、あて具を使ったり包帯やテーピングを用いたりして患部を固定することで、患部の更なる損傷を防ぎます。打撲や捻挫、肉ばなれなどで痛みが少なくても動き回っていると悪化させる恐れがあります。当たり前の事の様ですが、外出先などを想像すると意外と難しいこともあります。色々工夫して極力安静を図りましょう。

たとえば、前腕骨の骨折(高齢者の方が転倒し地面に手をついた時に起こりやすい)
下の写真の様に雑誌などで患部を下から支えるだけでも患部を安静出来ます。
「Icing:アイシング」について
アイシングの効果について簡単に説明します。
1.血管を収縮させる
アイシングした部分の血管を収縮させることによって、血流量が減少します(一次的血管収縮)。これにより、内出血(→いわゆる”あざ”になるもと)の量を減らすことが出来ます。内出血が減るということは分解吸収される時間が減るわけで、治るまでの時間が減ります。
2.組織代謝の低下
代謝とは、体に取り込んだ栄養素が体内で起こす様々な化学反応のことです。温めると亢進し冷やすと抑制されます。これにより、周りの正常な細胞が破壊されること(二次的低酸素症)を防ぐことができます。
2.痛覚をにぶらせる
痛みを脳に伝える神経を鈍くさせます。痛みが減るということです。
3.筋スパズムを減らす
筋スパズムとは、
①患部に痛みを感じると身体は防御反応を起こし筋肉が硬くなる

②筋膜内(筋肉は筋膜という袋に覆われています)の内圧が上昇し血液が流入しにくくなる

③筋肉が虚血状態になと痛み物質を発生

④この痛みにより防御反応が発生


というような悪循環のことです。
2で説明した、アイシングにより痛みが減る、ということはこの筋スパズムの悪循環を減らす効果が期待できるということです。
どんな時にアイシングを行った方が良いのか?
〇ケガの初期
 ケガをした時は、その直後に「出来るだけ早急に」行います。ケガの程度にもよりますが、ケガ後2~3日行います。損傷した血管を収縮させて血流を減少させ腫れを最小限に抑えるためです。
〇運動後
 運動後のクールダウン、疲労対策として。例えばランニングの後にいつも膝が痛くなる場合は、運動直後に炎症を抑えるためにアイシングを行います。
×運動前・中
 ケガのリスクを高める恐れがあるので行わないで下さい。ウォーミングアップの前にアイシングを行うなどの方法もありますが、専門家の指導のもとに行って下さい。
アイシングを行う時の注意点
患部をアイシングしても腫れや痛みが引かない場合は医療機関へ相談して下さい。

また、次のような症状がある場合や部位は、アイシングを行わないで下さい。
・神経障害(感覚障害)のある部位
・寒冷アレルギー
・レイノー病(発作性血流障害を呈する疾患)
・リュウマチ性関節炎
・循環器疾患
・心臓や胸部
・高齢者や高度の高血圧、心疾患、腎疾患、呼吸疾患など
アイシングの方法
実際にアイシングを行ううえで重要なことは次の3つです。
1.冷却温度:
アイシングの冷却温度が氷点下になると凍傷の恐れが生じます。家庭用の冷蔵庫から取り出したばかりの氷は氷点下です。家庭用の冷凍庫の温度はJIS規格により「ー12℃以下」と決まっているそうです。食品の安全の観点から微生物が増殖できない温度とのこと。ちなみに、冷蔵庫は10℃以下。
2.冷却時間:
アイシングの時間は15~20分程度が望ましいとされています。実際にやってみると分かりますが、アイシングを行うと次の様な順番で感覚が変化します。最後の「感覚が無くなる」まで行います。

痛い(ジーンとくる痛み)→温かい(短い時間ですが最初に感じる冷たさによる痛みが和らぐ)→ピリピリ(針で突かれるような感じ)→感覚が無くなる(冬の寒い日につま先に感覚がなくなった感じ)

個人差や部位による違いもあるので所要時間は何分!とは言えないのですが、「感覚が無くなる」になったら一旦アイシングをやめます。
目安
足関節など筋肉や脂肪が少ない部分は20分程度。
大腿部など筋組織の分厚い部分は30分程度。

3.冷却頻度:ケガ直後とスポーツ障害でも必要な間隔が異なります。アイシング後、再度痛みが戻ってきたらまたアイシングを繰り返します。1~2時間のインターバルを目安にして下さい。


〈上記の点を理解した上でアイシングを行ってみましょう!〉
ビニール袋に氷を入れ少量の水を入れます(凍傷を防ぎます)。氷はパンパンに入れ過ぎず、ビニール袋の底に敷き詰める程度。
・入れ過ぎると患部に当てづらいです。
・袋の口を結び塞ぐ余裕を持たせましょう。。

ビニール袋の中の空気を抜き、口を塞ぎます。患部に当てやすくなりますし、氷も長持ちします。

患部に当てる。弾性包帯やタオル、サランラップなどで氷の上から患部を圧迫するように巻きつけるとよいですね。
アイシングの効果を高める為にも「安静」「圧迫」「挙上」を意識して行います。

最近では、ゲル状(カチカチでなく、形を変えられる)で冷蔵庫で冷やして使えるもの、握りつぶすと冷えるもの、スプレータイプのものなど様々な便利アイシング用品が市販されています。もちろん、お金はかかってしまいますが、スポーツをする人などはぜひ用意してアイシングを活用してください。
「Compression:圧迫」について
出血・腫れを抑えるために行います。アイシングの前に行う場合もあります。アイシングの際や次に説明する「挙上」を同時に行うとよいです。
弾性包帯やテーピングなどで患部を圧迫しながら巻きます。足関節の捻挫などでは、パットを圧迫したい部分の形に切り、患部に当て、その上から圧迫する方法も用いられています。
(注意点)
圧迫が強すぎると、血流を悪くし過ぎたり神経を圧迫してしまうことがあるので注意しましょう!圧迫した患部の遠位部(心臓から遠い部分)が青くなったりシビレが出たら、いったん圧迫を緩めましょう。青みやシビレが取れたら強さに気を付けて再び圧迫します。圧迫だけでなく、RICEをしている間は、常に幹部から遠位部の状態をチェックしましょう。
・時々、指先などをつまんで感覚や皮膚、爪の色をチェックします。
「Elevation:拳上」について
ケガをしたところを出来るだけ心臓よりも高い位置にキープすること。これにより血管内の圧力が下がり内出血を抑えたり、痛みも軽減できます。椅子やクッションなど手ごろな高さのものを用意しのせておきます。
実際にRICEをやってみましょう!
足関節を捻挫した場合を想定して実際にRICEをやってみるとこんな感じです。
このエントリーをはてなブックマークに追加